Health and self-therapy information

2025-08-10 17:20:00

asa Health Information 2025.8月号  『痛み』 のとり方

 『痛み』のとり方

1.「体の痛み」と「心の痛み」

「体の痛み」と「心の痛み」は同じ神経回路や脳の部位を共有しているため、脳の中で似た反応が起こることがわかっています。

例えば、誰かに冷たくされたときに「胸が痛い」と感じるのは脳の仕組みによる自然な反応なのです。

 

2. 「体の痛み」と「心の痛み」の神経回路の共有

体の痛み(身体的痛み)と心の痛み(感情的痛み)は、脳内で同じ領域、特に帯状回(cingulate cortex)や前頭前野(prefrontal cortex)などを介して処理されています。この現象にはいくつかの理由があります。

• 進化的な観点: 人間の脳は進化の過程で、身体的な痛みと感情的な痛みを結びつけるように発展してきたと考えられています。身体的な痛みは生存に直結するため、感情的な痛みも同様に重要視され、両者が関連付けられた可能性があります。

• 生理的な反応: 身体的な痛みは、危険や損傷を知らせるための重要な信号です。一方、感情的な痛みは、社会的なつながりや関係性の喪失を示すものです。これらの痛みが同じ神経回路を通じて処理されることで、個体が危険を回避し、社会的なつながりを維持するための適応的な反応が促進されます。

このように、脳が既存の神経経路や構造を別の用途に再利用する現象のことを、「コウプト(co-opt)」といい脳の効率化と適応戦略のひとつです。

 

3. 他に見られるコウプトの例
心の痛み・身体の痛みのように、もともと異なる領域だったものが共用経路になっているケースは多くあります。

元の機能 コウプト後の機能 神経・脳領域
身体の痛み(侵害受容) 心の痛み(失恋・社会的拒絶など) 前帯状皮質(ACC)、島皮質
苦味の感覚 道徳的嫌悪、社会的嫌悪感 島皮質、扁桃体
顔認識(視覚) 顔の表情による感情推測  側頭葉・扁桃体
音声の知覚   言語理解 聴覚野 → ブローカ野・ウェルニッケ野
眼球運動 算術・計算(例:数直線) 頭頂葉
手の運動制御 道具使用・書字・タイピング 運動野+前頭前野
摂食の咀嚼運動 発話の口腔運動 舌・口唇の運動野

 

「苦み」と「嫌悪感」は顔面筋(表情筋)では同じ筋肉が収縮し同じ表情になります。「苦み」と「嫌悪感」の神経システムの共有を垣間見ます。

 

 4. コウプトの意味(なぜ脳は再利用するのか)

脳は新しい配線をゼロから作るより、既存の神経経路を転用する方がエネルギーと時間の節約になるからです。     

(主な理由)     

① 省エネ

神経回路の新規構築は代謝コストが大きい。既存経路を流用すれば負担が減る。

② 学習スピードの向上

既存の動作や感覚に新しい意味付けをする方が習得が早い(例:舌を使った言葉の発音は咀嚼運動から流用)。

③ 生存戦略

社会的拒絶の痛みを身体の痛みの経路で感じるのは、集団からの離脱を危険信号として素早く察知できるから。

④ 柔軟性

進化的に新しい機能(言語・抽象思考など)は、古い脳構造の上に「増築」されるため、自然にコウプトが起こる。        
       

5.  「体の痛み」と「心の痛み」の緩和や徐痛における共通点

「体の痛み」と「心の痛み」が同じ神経回路を共有しているため、痛みの緩和や徐痛においても共通のアプローチが存在します。 

五感を刺激する方法やマインドフルネス、運動などのアプローチが有効であることを示唆していますが、これにより、身体的な痛みと感情的な痛みの両方に対して、より有効なセルフセラピーも可能になります。   

 

(主な方法)

• 五感の刺激: 五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を刺激することは、痛みの緩和に役立つことがあります。例えば、リラクゼーション音楽を聴く、アロマセラピーを利用する、心地よい触覚刺激を受けるなどが挙げられます。これらの刺激は、脳内の報酬系を活性化し、痛みの感覚を軽減することができます。

 

• マインドフルネスや瞑想: マインドフルネスや瞑想は、心の痛みを軽減するだけでなく、身体的な痛みの緩和にも効果があります。これらの技法は、痛みの感覚に対する認識を変えることで、痛みの強度を低下させることが示されています。

 

<マインドフルネスの行い方>

マインドフルネスの瞑想では瞑想の医学的効果から宗教性を排除した方法をとります。

1.体の力を抜き背筋を伸ばして座ります。(顔面は脳神経支配領域なので顔の力も抜きましょう!)

2.体が欲するがままの呼吸をしながら、呼吸だけに意識を集中します。(鼻から息が入る感覚やそれに伴い胸やお腹が膨らんだり縮んだりする感覚などを詳細に体感するようにします)

3.雑念が浮かんできてもそれを追わないようにしてただひたすら呼吸とそれに伴う体感だけに意識をおきます。

4.最後はまぶたの裏に注意をはらいゆっくり開眼します。

*体がしたいように呼吸させてコントロールしたりせず、肉体が心地よく感じられる程度で長さにこだわらず行ってください。

 

• 運動や身体活動: 身体を動かすことは、エンドルフィンの分泌を促し、身体的な痛みを軽減するだけでなく、心の痛みにも良い影響を与えることがあります。運動はストレスを軽減し、気分を改善する効果があります。

 

6. 五感の刺激による痛みの緩和と除痛法 

💠『触覚』によるもの

子供が転んだり、ケガをしたりしたときにお母さんが ”痛いの痛いの飛んでいけ” といいながら痛めたところを擦ってやると子供は泣くのを止めたり、「胸を撫で下ろす」という言葉が安心感という意味に使われるのも、「胸を撫で下ろす」という行為自体に情動系を落ち着かせる効果があるので、本当に安心感が得られるためです。

 

① 「”痛いの痛いの飛んでいけ”」 撫でることで身体の痛みが和らぐわけ

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♠ 神経信号の競合(ゲートコントロール理論)

痛みは皮下にある痛みセンサー(自由神経終末)Aδ線維・C線維が痛み刺激で興奮し、痛みの刺激を脊髄(後角)→脳(視床)→大脳皮質感覚野に伝えて痛みを感じています。この痛みセンサー(自由神経終末)Aδ、C線維は、細く・脳への伝導速度は遅い特徴があります。

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一方、皮膚を撫でると(触覚)Aβ線維が強く活動し、脊髄後角の「痛み信号のゲート」を抑制します。

📌 ポイント:Aβ線維は伝導速度が速く、抑制性介在ニューロン(痛み止め)を介して痛み経路を「上書き」できる。触覚を伝えるAβ線維は太く(痛覚Aδ線維の約3倍)・脳への伝導速度が速い(痛覚Aδ線維の約4倍)特徴があります。
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この結果、(触覚)Aβ線維が強く活動するので、脳に届く痛み信号(自由神経終末)Aδ線維・C線維の刺激が減り、痛みが和らぎます。

お母さんの ”痛いの痛いの飛んでいけ” はお母さんの手の刺激(なでる)が子供の(触覚)Aβ線維を刺激して、痛みの感覚神経・自由神経終末(Aδ線維・C線維)を感じなくさせ痛みを消していたのです。


撫でる効果 → 触覚経路(Aβ線維)が痛覚経路を抑制 + 安心ホルモン(オキシトシン)分泌⇒痛みの緩和・除痛

 

 

② 「胸を撫で下ろす」が心の痛みを和らげるわけ

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♥ オキシトシンやエンドルフィンの分泌

撫でる行為は安心感・愛着を生み、視床下部からオキシトシン(愛情や絆の形成、ストレスの軽減)が分泌されます。

同時に脳内報酬系や下行性痛覚抑制系が働き、エンドルフィン(痛みの緩和、幸福感の向上)やセロトニン(気分の調整)が増え痛みの知覚を下げます。

 

このように「胸を撫で下ろす」が心痛を和らげるのには、いくつかの神経生理学的な根拠があります。
これは単なる比喩ではなく、実際に身体への触刺激(触れる)が情動系の神経回路に作用します。

Ⅰ. 胸部の触覚刺激と自律神経の関係

胸を撫でると、皮膚のC触覚線維(C-tactile afferents)が刺激されます。

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この線維は「心地よいゆっくりした触れ方」に特化しており、脳の島皮質に直接信号を送ります。

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島皮質は情動・内受容感覚(心拍、呼吸、内臓感覚)と深く関わるため、安心感・安全感を生じさせます。

Ⅱ. 呼吸と心拍への影響

胸を撫でる動作は、同時に胸郭と呼吸筋をゆっくり動かすため、副交感神経(迷走神経)が活性化します。
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迷走神経が優位になると心拍数が下がり、血圧も安定し、情動的な興奮(不安・心痛)が低減します。

Ⅲ. ホルモン・神経伝達物質の変化

心地よい触れ方はオキシトシンの分泌を促進し、扁桃体の過剰活動を抑えます。
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さらに下行性痛覚抑制系を活性化して、身体的・心理的な「痛み」の知覚を両方減らします。

撫でる効果 → 触覚経路(Aβ線維)が痛覚経路を抑制 + 安心ホルモン分泌


まとめると

「胸を撫で下ろす」という行為は

Ⅰ. C触覚線維 → 島皮質 → 安心感


Ⅱ. 胸郭運動 → 迷走神経活性 → 副交感神経優位


Ⅲ. オキシトシン・エンドルフィン → 扁桃体抑制
という三段階で心痛をやわらげます。

 

7. 言葉のかけ方で「心の痛み」が変わる理由

心の痛みも身体の痛みと同じく、脳の前帯状皮質(ACC)や島皮質が関与します。(痛みやストレスに対する感情的な反応を調整)

優しい言葉:脳扁桃体の警戒信号が下がり、オキシトシン・セロトニンが増加 → ACCの活動が低下 → 痛み・不安の知覚が減る。

否定的な言葉:扁桃体の活動が上がり、ストレスホルモン(コルチゾール)が増加 → ACCが活発化 → 心痛や不快感が増す。

📌ポイント: 言葉は「音」として耳から入るだけでなく、意味情報として脳の情動中枢に直接影響するため、「体の痛み」と「心の痛み」両方を変化させます。

 

このように、優しい言葉や前向きな言葉は、脳の扁桃体や前帯状皮質の活動を落ち着かせ、痛み知覚を下げることが分かっています。

<痛みに効きやすい言葉の条件>

① 安全感を与える
「大丈夫」「安心して」「そばにいるよ」
→ 扁桃体の過剰反応が下がり、副交感神経が優位になる。


② 自己効力感を高める
「乗り越えられるよ」「あなたならできる」
→ 前頭前野の働きが強まり、痛みに対する脳の評価が変わる。


③ 優しい声色と組み合わせる
言葉だけでなく、声のトーンやリズムがオキシトシン分泌を促す。

具体的なフレーズ例

「痛みがだんだん小さくなっていくよ」

「ここは安全だよ、安心して」

「君の体はちゃんと回復に向かってるよ」

子ども向けなら:「痛いの痛いの飛んでけ〜」

📌 重要なのは、言葉そのものよりも「相手が信頼している人の声で、優しく言われること」です。
これによって脳は「安全」シグナルを受け取り、痛覚や不安を抑える神経回路が働きます。


<心の痛みに効きやすい言葉の条件>

① 感情を否定せず受け止める

「つらかったね」「それは苦しかったよね」

→ 感情の存在を認めることで、前帯状皮質の過活動が鎮まりやすい。

② 孤独感を減らす

「ひとりじゃないよ」「そばにいるから」

→ オキシトシン分泌が促され、社会的安心感が増す。

③ 未来への希望を少し灯す

「必ず楽になる時が来るよ」

→ 前頭前野の活動が強まり、希望的再評価が起こる。

具体的なフレーズ例

「あなたの気持ちは、ちゃんとわかってるよ」

「そばで支えるから大丈夫」

「泣いてもいいんだよ」

「ゆっくり休もう」

「時間が癒してくれるから、無理しないで」

📌 ポイント

心痛の場合、「頑張れ」は逆効果になることもあるため、まずは受容的な言葉が先。

言葉と同時に優しい視線・声のトーン・触れ方もセットで使うと効果が高い。

相手が信頼している人からの言葉ほど、脳の鎮痛・安堵反応は強い。


<自分自身の心の痛みを和らげる魔法の言葉>


これは「自分に優しく声をかける+安心する身体刺激を与える」ことを組み合わせて、脳の情動回路を落ち着ける方法です。

1. 魔法の言葉(セルフトーク)

声のトーンは、穏やかでゆっくり・低めが理想。
脳は自分の声でも安心感を感じることがあり、副交感神経が優位になります。

例:(セルフトーク)

「つらかったね」

「大丈夫、時間がちゃんと癒してくれる」

「私の気持ちはちゃんと大事にしていい」

「私は守られている」

 

     



2. 効果的な身体へのスキンシップ

胸に手を当てる(心臓の上)
→ 心拍が落ち着き、オキシトシン分泌を促す。

両腕で自分を抱きしめる(セルフハグ)
→ 体温と圧覚刺激で安全感を与える。

胸をゆっくり撫で下ろす
→ 触覚刺激が迷走神経を介して情動を鎮める。

顔をそっと包む
→ 自分に「大丈夫」と言われている感覚を作る。



3. 脳と神経の働き

優しい声の自己暗示 → 前頭前野での情動再評価(1.魔法の言葉)

触覚刺激 → 脳の島皮質や扁桃体の過活動を抑制(2.身体スキンシップ)

両者が合わさることで、心拍・呼吸が整い、心の痛みが軽減される

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自分の心痛にきく魔法の言葉は、声のトーン、効果的な身体へのスキンシップ

 

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まとめ:

「体の痛み」と「心の痛み」は同じ神経回路を共有しているため、痛みの緩和や徐痛においても共通のアプローチが存在します。触刺激(触れる)では自・他ともに、身体痛は痛いところを擦る、心痛は胸に手をあてる、ゆっくり撫で下ろすなどが効果的。

 

発声(⇒聴覚👂⇒脳)は、声のトーンは穏やか、ゆっくり、低めが安心感を与える。

言葉(⇒聴覚👂⇒脳)は、安全感を与えることば「大丈夫」「安心」

ポジティブなことば、「乗り越えられるよ」「あなたならできる」

感情を受け止めることば、「つらかったね」「それは苦しかったよね」

孤独感を減らすことば、「ひとりじゃないよ」「そばにいるから」「守られている」

このような言葉は、聴覚👂から脳を刺激し、痛み・不安の知覚が減る脳内ホルモンを分泌させ、前頭前野の働きが強まり痛みに対する脳の耐性が高まり、扁桃体や前帯状皮質の活動を落ち着かせ痛み知覚を下げたり、自律神経の副交感神経が優位に働くので、ストレスの軽減、感情の安定、睡眠の質の向上、集中力の向上、社会的なつながりの促進、自己認識の向上、身体的な健康の改善など、身心を落ち着かせ、心身のバランスを整える効果も高まります。

 

 

2025-08-06 01:13:00

真実を観る「眼力」56 まねる ③ 心を整える身体性トレーニング(実践編)

「身体を整える」、「身体性を高める」ことは「心を整える」ことに繋がる、これを身心相関とも言います。


人の身体構造が出力(身体性)重視に設計、最適化されているなら、「心を整える」ために精神性を高める努力を重ねるより、「身体を整える」方からアプローチした方が効果的、効率的に「心を整える」ことになると言えます。

 

「意識の偏りを修正」し、「心を整える」ということに意識を置き、身体性トレーニングを通じ、身体の左・右バランス、上半身・下半身バランス、前・後バランス、内・外バランスを整える運動で、身心のバランスを良くし「心を整える」身体運動を紹介します。



🔄 基本原理:身体が整えば、心も整う

  • 身体の左右・上下・前後・内外のバランスの崩れは、心理的な偏りやストレス状態を引き起こしやすくします。

 

  • 身体を通して心を調律するには、神経系の安定、筋骨格の整合性、呼吸と動きの統一性がカギです。

 

  • 「整える」とは、左右差・上下差・前後・内外差を感じながら、それらを統合していく意識の流れでもあります。



🔰 まず整えるべき身体のバランス

種類 内容 整える目的
左右バランス 左右の筋力・感覚の違い  思考・感情の偏りのリセット
上下バランス 下半身の安定と上半身の柔軟性 グラウンディング(地に足がついた状態)
前後バランス 背中と胸の開閉のバランス 意志と感情の統合
内外バランス 内臓(内面)の働きと皮膚の感覚 自己と他者、境界意識の調整



<💖心を整える身体性トレーニング(意識調整型)>

1.【左右バランス調整】片足立ち+意識観察

方法:左右それぞれ30秒〜1分ずつ、裸足で片足立ち。

 

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ポイント:

足の裏の感覚をよく感じる

軸のブレに気づく(=意識の偏り)


効果:

自律神経の調整(特に迷走神経)

脳幹レベルの感覚統合を促進



2.【上下バランス統合】「重心落とし歩行」(スローモーション歩行)

方法:下半身の安定を意識しながら、重心を「落とす」ように、ゆっくり歩行。

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手順:
足を出す前足の、軸足の重心をかかと→土踏まず→つま先へ移動させる


一歩ずつ「体重を預けて」進む

上半身は力まず、背骨を意識してまっすぐ

 

効果:

マインドフルネスとグラウンディングの同時強化

🕺上半身(心)と下半身(地)の統合

 

 

3.【前後のバランス】1

[骨盤ロール+胸骨の連動] 骨盤前傾・後傾と胸骨前方・後方運動の自覚トレーニング。

 

方法:
座って、骨盤を前傾・後傾と動かしながら、胸骨も前方・後方へ動かすのと連動させる

呼吸と連動させて、

「吸う:骨盤前傾+胸骨前方」

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「吐く:骨盤後傾+胸骨後方」で10回
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意識:腰ではなく骨盤の付け根から動かす意識

 

効果:

骨盤と胸郭の柔軟性とコントロール感覚を高める

脳と脊髄液の循環促進

感情エネルギーの解放と再統合

 

🔁【前後バランス】を整える意味と効果

身体の前後バランス  心への影響
前のめり(猫背) 焦り・不安・急ぎすぎ・過緊張
後ろ反り(反り腰) 無関心・恐れ・逃避・無力感
中立の軸 安定・今ここ・呼吸が深くなる

 

【前後のバランス】2

「猫のポーズ(Cat Pose)」は、前後のバランスを整えるための極めて効果的なトレーニング。

このポーズは、背骨、骨盤、呼吸、神経系、感情の流れすべてに作用する、いわば「心身統合のスイッチ」でもある。

🐈 猫のポーズとは(基本)

ヨガの「キャット&カウポーズ(マールジャリ・アーサナ)」として知られ、

キャットポーズ(猫のポーズ):背中を丸める(吐く息)

カウポーズ(牛のポーズ):背中を反らせる(吸う息)

この2つを連動させて背骨を前後に動かしていきます。

 

猫のポーズ.png

 

🌬️ 前後運動で意識すべき主なポイント  

ポイント  猫のポーズ(背中丸める) 牛のポーズ(背中反る)
呼吸 吐く 吸う
骨盤 後傾(尾骨を下へ) 前傾(尾骨を上へ)
背骨 背中を丸める(一椎ずつ) 背中をしならせる
肩甲骨 開く 寄せる
首  丸めて顎を引く 前を向く・顎を少し上げる
目線 おへそを見る 少し前方を見る

 

 

🎯 前後運動の目的と深い意識

意識の焦点 意識の言葉 目的
呼吸との連動 「吸って反らせ、吐いて丸める」 呼吸と動作の統一(自律神経調整)
背骨の波 「背骨が波のように動いている」 前後運動の流れ・しなやかさ
胴体の中心感覚 「骨盤から動き始める」  中心軸(体幹)の再認識
心の調律 「前屈=内観、後屈=開放」  感情の波の調整と解放

 

😻 実践の流れ(1セット5呼吸〜)

1. 四つ這いになる

手のひらは肩の下、膝は股関節の真下

背骨はニュートラル(平ら)からスタート

2. 吸いながら牛のポーズへ

骨盤を前傾(尾骨を上へ)

背中をゆるやかに反らす

胸を開き、喉元を緩める

「私は開いていく」という意識

3. 吐きながら猫のポーズへ

骨盤を後傾(尾骨を下へ)

背中を丸め、お腹を背骨へ引き込む

肩甲骨を開く、頭は下へ

「私は手放していく」という意識

4. 5〜10回ゆっくり繰り返す

 

 

💡 応用・深化のためのコツ

 1. 背骨を「一椎ずつ」動かす意識

骨盤→腰椎→胸椎→頸椎の順に動かす

波打つような背骨の連動で、身体の「通り道」が開かれる

2. 呼吸の質を高める

動作の大きさよりも、呼吸に伴う動きの繊細さを重視

「吸う息:ひらく」「吐く息:閉じて浄化」

3. 感情の出入りを観察する

背中を丸めると、内省・安心・涙が出ることも

背中を反らせると、不安や抵抗が出る場合も → どちらも「心のバランス」を調整するプロセス

 

 

この前後運動がもたらす効果

身体面 精神面
背骨・骨盤の柔軟性向上 感情の流動性アップ
呼吸が深まる 思考の静まり・安心感
自律神経の安定 心の偏りの修正(今ここへ)
姿勢の中立性が育つ 内面の中立性・俯瞰力

 


🎁 補足:このポーズが導く「意識の軸調整」

前=未来への焦りや期待
後=過去への後悔や恐れ

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🐈猫のポーズで、その両方を動かし、調和させることで「今ここ」への軸が定まる

 

 

4.【内外のバランス...アーシングによる「地」の瞑想】心身一如を育てる

方法:

①「左足:足から地へ、身体に蓄積されている電磁波や邪気が「地」へ放出されるのを感じる」

 「右足:足から地へ、身体に蓄積されている電磁波や邪気が「地」へ放出されるのを感じる」

*左右同時意識

 

②「左足:地を感じる」

 「右足:地を感じる」

*左右同時意識

 

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(呼吸で内観)

③ 息を吐きながら

「左足:足から地へ、身体に蓄積されている電磁波や邪気が「地」へ放出されるのを感じる」

「右足:足から地へ、身体に蓄積されている電磁波や邪気が「地」へ放出されるのを感じる」

*左右同時意識

 

④ 息を吸いながら

「左足:足から丹田に、地のエネルギーを引き上げる」

「右足:足から丹田に、地のエネルギーを引き上げる」

*左右同時意識

 

③と④を呼吸に合わせ交互に繰り返す。

 

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効果:
自己観察の深化

無意識下の身体パターンと心の状態の再構築

身体と心の境界意識の調整

自他の統合

 

補足:なぜ身体から心が整うのか?

身体運動(とくに下半身の安定と呼吸)は、自律神経系・内分泌系・免疫系に即時的に作用します。

心の状態を司る前頭前野は、身体の入力(体性感覚..感じる)によって活性が変化します。

特に重心と呼吸を意識的に整えることで、「今ここ」に心が引き戻され、雑念や偏りが静まるのです。

 

 

🎯 まとめ:意識の偏りを修正し、心を整えるには…

  • 精神性を磨く前に、まず身体性を整える。

 

  • 整った身体が、整った心を育てる。

 

  • そのためには、左右・上下の身体バランスを意識しながら、身体操作、呼吸、歩行を調律する訓練が鍵。

 

  • 前後のバランスを整えることは、「自分の在り方(姿勢)」と「心の姿勢(内面の傾き)」を一致させるための非常に深いワーク。

   

これは、「前のめり=未来への焦り」「のけ反り=過去への逃避・不安」など、心の状態が身体に現れやすい軸でもあるため、意識と訓練の両面でアプローチすることが重要。⇒効果:前のめり傾向(焦り)や、のけ反り(不安)を中庸へ戻す(バランス)

 

  • 内外のバランスを整えることは、 自己観察、客観性、俯瞰の深化を促し、身体と心の境界意識の調整と統合により、自他統合の意識による共生・共栄を育む。

     

2025-08-02 17:49:00

真実を観る「眼力」55 まねる ② 『表情をつくる・行動する・体現する』=『心を整える』

「表情」は脳と感情のスイッチになっているので、「表情」を意図的に作ることで、感情や心をコントロールすることが出来るという事なのですが、つまり「表情」を作る=肉体で「体現」するとは、自身の内面、心、感情を意識的にコントロールするということにつながるということで、「表情を作る」・「体現する」=意識的に自分の「心・感情を整える行為」であり、それは最終的に人生のあり方や生き方にも影響を与えることになります。

人は、生物進化の初期段階においては生命を維持させていくために、原始的な脳は身体運動(脳幹、小脳、基底核などの旧脳)などをまずは作り出し、高度な情報処理や思考などを司る大脳新皮質などの脳は、後から派生させてきたことが脳の構造から伺われます。大脳新皮質は旧脳の上に乗っている構造です。

 

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脳の構造から、人間の脳と身体は「身体運動・行動=(出力)」を最優先するように進化し、それに合わせて「感覚・認知=(入力)」が後から補完されてきた構造になっています。

つまり脳は元々、「“出力=行動”」のために発達した器官であり、「身体性=出力」が「精神性=入力」に先立ちできた後、心や思考は、その「身体性」回路を“借りて”発達してきました。

 

<脳と身体は「身体運動・行動=(出力)」を最優先するように進化>

🧠①「脳=身体制御装置」が出発点だった

 進化の歴史から見る脳の成り立ち

脳は最初、身体の動きを制御するために発達した。(出力)

約5億年前、原始的な動物は“動く”ために神経系(脳の原型)を持ち始めた。(出力)

このころの脳は筋肉を動かす(運動)ための出力装置。(出力)

一方、言語や論理思考の機能(精神性)は約10万年前に発達したばかりで、脳全体の歴史からすると非常に新しい。(入力)


🧠 ② 脳の進化:旧脳 → 新皮質(出力する脳が先に出来上がった

分類 脳の部位 機能 出力 vs 入力
旧脳 脳幹(生命維持中枢) 呼吸、心拍、姿勢反射など 出力:反射的行動制御
旧脳 大脳基底核 習慣的な運動、運動の選択 出力:行動の調整
旧脳 小脳 運動学習、バランス制御 出力:精緻な運動制御
旧脳 大脳辺縁系 感情、欲求、行動動機づけ 出力:行動駆動型の感情反応
新皮質 大脳新皮質(進化後) 思考、言語、意識、感覚 入力:知覚と認識の処理


🧠 ③ 脳の中で先に発達したのは「運動の中枢」、思考や感覚処理はそれに付随して進化

→「考える前に動く」=(出力)⇒(入力)が本来の脳の順序であることを物語る。

 

🧠 ④ 記憶も「出力型」が定着しやすい

読むよりも話す・書く・教えるといった出力を通したほうが記憶は定着する。

この理由は、脳が「使った回路を強化する」仕組みを持つため。

つまり、「出力を通して記憶する」設計なのです。

 

💪 ⑤ 身体構造は出力(運動)に最適化されたデザイン

【身体の設計】

◉骨格と筋肉:運動と移動に特化。入力機能(感覚器)はごく限られた部位(目、耳、皮膚など)。
 90%以上の筋肉と骨格 = 移動や運動、行動用 『出力系』

 感覚器は小さく集中(目・耳・舌・皮膚) 『入力系』

◉脊髄反射:脳を介さず直接運動出力を起こすシステムが備わっている。『出力系』

◉感覚入力よりも、運動出力に使われるエネルギーと神経リソースの方が多い。

 

📍つまり:入力(感覚)は、運動(出力)を調整・補助するために存在している構造。

 

🔑⑥ 応用:なぜ「行動すること」が先なのか?

「感情を変えたいなら、まず表情を変えなさい」(表情→感情への逆作用)表情フィードバック仮説

「姿勢を変えれば、気分も変わる」(身体→脳へのフィードバック)

「行動すれば脳が意味づけしてくれる」(認知の後追い)

🧠 これらはすべて、「脳が出力ベースに構成されている」から。

 

<身体を通して心を整える:身体→心の流れ>

✅キーワード:身体性(embodiment)

「身体は心の容れ物」ではなく、「身体を使うことで心が形づくられる」という考え方です。

 

 🌱①「健全な精神は健全な身体に宿る」科学的な意味

古代の格言ですが、脳の進化と構造から見ても非常に理にかなっています。

精神の安定・感情の調整は、身体性(運動・姿勢・呼吸など)を通して制御するほうが効果的。

ヨガ、呼吸法、瞑想、運動療法などが有効なのもこれに一致します

 


🌿② 行動・表情・姿勢が感情に与える影響の例

行動・表現 心への影響 背景にある生理・神経反応
笑顔を作る 不安がやわらぎ、ポジティブな気分  ドーパミン・セロトニンの分泌増加
胸を張る・背筋を伸ばす 自信が湧く、やる気が出る コルチゾール減少、テストステロン上昇(パワーポーズ効果)
猪木顔で気合を入れる 闘争心、集中力、ゾーン状態へ アドレナリン、交感神経の活性化
深呼吸・ゆっくり歩く 心が落ち着き、穏やかになる 副交感神経の活性化、オキシトシン分泌
祈る、手を合わせる 感謝や謙虚な気持ちが生まれる 前頭前皮質の働きが高まり、利他的思考が促される

 

【胸を張って歩く鳩胸の鳩】

鳩胸の鳩1.jpg

 

🌀 ③ 行動が「習慣化」すると、生き方が変わる

◆例1:いつも背筋を伸ばして歩く

→ 「私は堂々としている人間だ」という自己認識が強化
→ 難しいことにも挑戦するようになり、現実も変化

◆例2:朝に笑顔で鏡を見る習慣

→ ポジティブな自己イメージが脳に刷り込まれ、自己肯定感が高まる
→ 人間関係や行動選択が自然にポジティブへ

 

🔁まとめ:行動・表情・姿勢が感情・人生を変える

  • 身体性を通した行動が、内面(心・意識)に影響を与える

 

  • 表情や姿勢、呼吸などの「体の使い方」が、脳の神経伝達やホルモン分泌を変え、感情・心の状態に影響

 

  • それを日常的に意識的に実践することで、習慣化 → 人格形成 → 生き方の変化へとつながる

 

  • 「体現すること」は、意識の表出であり、自分自身を創造していく行為

 

🌟 極意

武道の「型の稽古=心の鍛錬」

→「心を変えたければ、まず身体を整えよ」という教え。

 

武道型.jpg

 

 

 

2025-08-02 15:55:00

真実を観る「眼力」54 まねる ① 猪木とエガオ(^O^)

豊橋中央高校が豊橋市からは74年ぶりに夏の甲子園出場を決めました。🙌

豊橋中央高校のエースピッチャーは、ピンチになったりするとアントニオ猪木の顔真似をして気合いを入れ投げています。

 

猪木1-1.jpg

 

 

これは、脳科学的、心理学的にも大変に理にかなった気合いの入れ方です!

人間の表情と感情、そして脳内ホルモンの分泌は双方向に影響し合っており、顔面フィードバック仮説(facial feedback hypothesis)」という心理学理論にも基づいています。

表情筋は様々な顔の表情と、その表情にふさわしい脳のホルモン分泌や感情がリンクされていて、例えばアントニオ猪木の顔の表情を真似ることで脳はこの表情を「闘争」や「緊張」と関連づけて記憶しており、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が促進され、闘争本能が促がされて、ほんとうに身体に気合いが入ります。

 

【1】表情→脳→感情への影響(顔面フィードバック)🔁

◆例1:猪木の顔を真似すると気合いが入る💪

猪木さんのような「闘志むき出しの表情」は、額や眉間、口角、鼻などの表情筋群を強く使います。

✅この筋肉の動きが三叉神経(第5脳神経)や顔面神経(第7脳神経)を通じて脳へ信号を送る

脳はこの表情を「闘争」や「緊張」と関連づけて記憶しており、

→ 扁桃体や視床下部を活性化

→ 交感神経が刺激され、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が促進される

 

◆例2:悲しい時に笑顔を作ると気持ちが上向く

例えば、悲しい時や心が沈んでいる時に、意図的な笑顔(作り笑い)でも、顔面神経経由で脳に「喜び」信号が送られ、ドーパミンやセロトニン、エンドルフィンといった「幸せホルモン」の分泌が促され、結果として本当に感情が楽しく、ポジティブに変化するのです。

✅意図的な笑顔(作り笑い)でも、顔面神経経由で脳に「喜び」信号が送られる

→ 前頭前皮質や側坐核が活性化

→ ドーパミンやセロトニン、エンドルフィンといった「幸せホルモン」の分泌が促される


【2】表情筋から脳への神経伝達経路(図解)

[表情筋]
 ↓(運動・感覚信号)
[顔面神経(第7脳神経)/三叉神経(第5脳神経)]
 ↓
[脳幹 → 視床 → 大脳皮質]
 ↓             
[扁桃体・視床下部] ←(感情中枢)
 ↓
[自律神経系/ホルモン中枢]
 ↓
[副腎髄質]→アドレナリン分泌/脳内→ドーパミン・セロトニン分泌

 

 猪木2.png

 

【4】表情と感情がリンクするその他の例

表情  関連感情 関連神経・ホルモン系
驚き(目を見開く) 警戒、警報 扁桃体・交感神経の活性化(ノルアドレナリン)
泣き顔(目尻下がり、口がへの字) 悲しみ、痛み  副交感神経・涙腺刺激(オキシトシン)
眉間にシワ、歯を食いしばる 怒り、集中 ノルアドレナリン・アドレナリン、筋緊張上昇
にっこり笑顔(目尻が下がる) 安心、幸福  セロトニン、オキシトシン、ドーパミン上昇

 


✅まとめ

表情と感情は双方向的に影響しあっており、表情を変えることで感情も変わります。

特にスポーツや緊張場面では、「表情を使って自分を鼓舞する」ことは非常に効果的なことです。

「表情」は脳と感情のスイッチになっているので、この顔面フィードバックシステムを意図的に使い、自身の感情や心をコントロールすることも出来るのです💡。

 

『楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ』

まず笑う(出力)ことで、それに見合う楽しい気分(入力)がフィードバックされてくるからです。

 

 

 

 

 

2025-07-30 00:32:00

真実を観る「眼力」53 多視点と意識の拡張による現象の創造 「アーユルヴェーダの考え方」 ② 

意識に偏りが生じる原因や心理的要因、そしてそれが視野や視点に与える影響と、また、意識の偏りがどのように内面の閉塞感や洗脳のリスクを高めるかについて。

 

💠意識に偏りが生じる要因

1. 経験と背景:

• 個人の過去の経験や文化的背景は、物事の捉え方に大きな影響を与えます。

特定の経験が強く印象に残る⇒それに基づいて物事を判断する傾向が強まる

2. 感情:

• 感情は思考に強く影響します。

ストレスや不安、恐れなどのネガティブな感情⇒ポジティブな情報を無視したり、逆にネガティブな情報に過剰に反応したりすることがある

3. 確認バイアス:

• 自分の信念や意見を支持する情報を優先的に探す⇒反対の情報を無視する傾向⇒特定の視点に固執しやすくなる

4. 社会的影響:

• 周囲の人々やメディアからの影響⇒特定の意見や価値観が広まる⇒それに同調することで自分の意識が偏る(同調圧力による意識の偏向含む)

 

💠 意識の偏りが及ぼす影響

1. 視野の狭まり:

• 意識が偏る⇒特定の情報や視点にしか目が向かなくなる⇒他の可能性や選択肢を見逃す⇒これにより、問題解決や意思決定の質が低下

例: ある人が特定の政治的立場を強く支持している場合、その人は反対意見を持つ人々の意見を無視したり、否定的に捉えたりすることが多くなります。その結果、異なる視点を理解する機会を失い、偏った判断をすることになります。

2. 内面の閉塞感:

• 自分の意識が狭まる⇒選択肢が限られていると感じる⇒内面的な閉塞感を抱く⇒この感覚が、自己効力感の低下や不安感を引き起こす

例: 職場での人間関係が悪化し、特定の同僚との関係にのみ焦点を当てている場合、他の同僚との関係を築く機会を逃し、孤立感を感じることがあります。このような状況では、職場環境全体が悪化しているにもかかわらず、その特定の関係にのみ意識が向いてしまいます。

3. 洗脳や騙されやすさ:

• 意識が偏る⇒特定の情報やメッセージに対して過剰に反応⇒批判的に考える能力が低下⇒誤った情報や洗脳に対して脆弱になる

例: 特定の宗教団体やカルトに引き込まれる人々は、しばしばその団体の教えに強く共鳴し、外部の批判や異なる意見を拒絶します。このような状況では、団体のリーダーが提供する情報が唯一の真実とされ、他の視点が排除されるため、洗脳されやすくなります。

 

【consciousness】

 

🔶「多視点的な判断力・客観視・善悪を俯瞰する力」についてのアーユルヴェーダの智慧

アーユルヴェーダ的理解では、視点・思考・判断などの偏りは、生まれ持ったドーシャ、乱れた心(マナス)と理性(バウディ)、過去の記憶(サンスカーラ)に影響されるという考えかたをします。

 

1. 体質(プラクリティ)と偏り
人の視点や思考パターンは、3つのドーシャ、「ヴァータ」・「ピッタ」・「カパ」によって大きく影響されます。

アーユルヴェーダにおける「ドーシャ」は、体質や性格を理解するための基本的な概念で、それぞれのドーシャには、身体的および心理的な特徴がありますが、これらの特徴を理解することで、個々の健康や心のバランスを考えることができます。

まず、あなたの生まれ持った体質(プラクリティ)は、どのドーシャなのかを下図から探してください。

 

● あなたの体質は? (What is your constitution?)

ドーシャ 身体的特徴 心理的特徴 判断の傾向 偏りの特徴
ヴァータ(Vata)

• 体型:

細身で軽やか、骨格が細い

• 肌:

乾燥しやすく、冷たい

• 消化:

不規則で、消化力が弱い

• 動き:

活発で、動きが速い

• 性格:

創造的で、柔軟性があるが、気分が変わりやすい

• 思考:

直感的で、アイデアが豊富だが、集中力が欠けることがある

• 感情:

不安や恐れを感じやすい

直感的

想像力豊か       

不安

混乱

先走った判断

ピッタ(Pitta)

• 体型:

中程度の体型、筋肉質でしっかりしている

• 肌:

温かく、オイリーで、色が赤みがかっている

• 消化:

消化力が強く、食欲が旺盛

• 動き:

活発で、エネルギッシュ

• 性格:

知的で、決断力があり、リーダーシップを発揮する

• 思考:

分析的で、論理的だが、短気になりやすい

• 感情:

怒りや嫉妬を感じやすい

分析的

鋭い論理        

批判的

怒り

正義感の暴走

カパ(Kapha)

• 体型:

がっしりとした体型、重くて安定している

• 肌:

滑らかで、しっとりしている

• 消化:

消化力が遅く、食欲が安定している

• 動き:

ゆっくりで、穏やか

• 性格:

忍耐強く、穏やかで、親切

• 思考:

安定していて、持続力があるが、変化を嫌うことがある

• 感情:

落ち着いているが、執着や怠惰を感じやすい

安定

寛容   

執着

頑固・変化への抵抗

 

 

🌿 ドーシャ別「視点の偏り」と「整え方」マップ

ドーシャ 視点の偏り(思考傾向・判断癖) 感情・反応の傾向

整え方

(心・体・行動の調整)

🌀 ヴァータ(風・空) 不安定な視点(気分や思いつきで判断)・未来に意識が飛びがち・早とちり、結論を急ぐ   不安、恐れ、焦り・思考過多、空想に逃避

✅ グラウンディング(大地に触れる)

✅ 規則正しい生活リズム

✅ 温かく油分のある食事(スープ、ギー)

✅ 深い呼吸・瞑想で静けさを取り戻す

🔥 ピッタ(火・水) 正誤や善悪の線引きが鋭すぎる・批判的、攻撃的な視点になりやすい・「こうあるべき」にこだわる 怒り、苛立ち、完璧主義・他人や自分を責める

✅ 冷却と緩和(自然・水辺・月の光)

✅ 涼性のある食事(ココナッツ、ミント)

✅ 「ゆるす」「手放す」瞑想

✅ 競争・評価から離れる時間をもつ

🌱 カパ

(土・水)

過去の視点に執着しやすい・変化を避け、現状を固守・「自分はこういう人間だから」と固定化 倦怠感、落ち込み、頑固さ・行動の停滞 

✅ 刺激と動き(運動、旅、交流)

✅ 軽めで温かい食事(スパイス・豆類)

✅ 朝の早起き・朝日を浴びる

✅ 小さな変化を歓迎する習慣をつける

 

2.マナス(心)とバウディ(理性)による偏り

【マナス(心)】が汚れる原因:

 

ラジャス(激性):怒り・欲・焦り・過剰な刺激

タマス(惰性):無知・怠惰・重さ・逃避



→ これにより理性(バウディ)が曇り、正しく善悪を識別できなくなる状態を「プラグニャ・アパラーダ(理性の誤作動)」と呼びます。

 

🔶 多視点を養い、理性を清めるアーユルヴェーダ的心がけ

 ● どう清める?  サットヴィックな生活、瞑想、食事、良き対話、自然との調和。

 

心がけ  解説
サットヴァ(純性)を育む 心を澄ませ、直観と理性を調和させるために、静寂、瞑想、自然との調和を大切にする
アハーラ(食事)を清める 軽く、消化しやすい、サットヴィック(純粋性)の食事を心がける
スヴァディヤーヤ(自己学習) 良書などを読んだり、芸術に触れたりして思考を深める
サットサンガ(善き仲間) 思慮深く、徳のある人々と関わり、視点を広げる
瞑想とプラーナーヤーマ(呼吸法)   

思考の静寂化と感情の統合

特に「ナディ・ショーダナ(片鼻呼吸)」が有効

 

 片鼻呼吸法(ナーディ・シュッディー)

★片鼻呼吸の手順
【手順1】アグラ(蓮華座)で座り、舌の先を上あごにつける
【手順2】口を軽くあけた状態で、両鼻から息を深く吸い、深く吐く(3〜4回繰り返す)
【手順3】目を閉じる
【手順4】右手親指で右小鼻を押さえて左小鼻から息を吸う(4秒)
【手順5】右手親指で右小鼻を押さえたまま、右手薬指と小指で左小鼻を押さえて息を止める(16秒)
【手順6】右手親指を開放して、右小鼻から息を吐く(8秒)
【手順7】吐ききったら、右小鼻から息を吸う(4秒)
【手順8】右手親指で右小鼻を押さえて息を止める(16秒)
【手順9】右手薬指と小指を解放して、左鼻から息を吐く(8秒)
【手順10】吐ききったら、左小鼻から息を吸う(4秒)
【手順11】手順3〜10を何度か繰り返す
【手順12】最後は、手順2と同様の行為で終える

 

 

🔶 まとめ

意識の偏りをなくして、

正しい判断をするためには、

外の情報を増やすよりも、

内の静けさと透明さを深める、

アーユルヴェーダでは「正邪を見極める力」は、体と心の清澄さ(サットヴァ)に根ざしていると考えま

 

『白馬岳』 静寂・清明

白馬.jpg

 

 

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