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真実を観る「眼力」57 利他と利己 8 脳のコウプトの選択と意識の向け方
1.身体性から認知性、人間性、社会適応性へ転用させるコウプト
前述しましたコウプト(co-option)は、もともとある脳回路が本来の機能とは異なる新しい用途に再利用されることを指す事でしたが、多くの場合、進化や発達の過程で身体性制御(身体感覚や運動を処理する回路)に基づく回路が → 認知的・社会的機能 という順序を辿り共用されています。
脳、神経回路を使い回すコウプトが、身体性から起こり、認知的、人間性、心的、社会適応性に発達させたりする理由は、新しい神経回路をゼロから作るより既存の神経経路を転用する方が、エネルギーと時間の節約になるうえ、進化的には新しい機能(大脳新皮質=言語・抽象思考など)は、古い脳構造(旧脳=身体制御)の上に「増築」されるため、自然にコウプトが起こるためです。
https://asa2000-cure.com/diary/184787(asa Health Information 2025.8月号『痛み』 のとり方)
例えば、「体の痛み」からコウプト(co-option)された「心の痛み」は、同じ神経回路や脳の部位を共有しますが、これは、人間の脳の進化過程で、「身体的な痛み」と「感情的な痛み」を結びつけるように発展してきたと考えられています。
つまり、「身体痛」の痛覚経路を「心の痛み」の痛覚経路と共有することで、「身体痛」から発展させ、「心の痛み」や「相手の痛み」を思いやる「共感」としても発展させたのものです。
2.脳は「自己都合」な解釈をする
ロンドン大学で興味深い実験が試みられました。
それは、「かつての同窓生が社会的に成功して羨ましい生活を送っているところを想像してもらう」ものでした。
この時、男女19人の被験者からは前帯状皮質と扁桃体が強く反応しました。これは不安の時に感じる他、嫉妬や妬み、劣等感にも反応する脳部位です。
次に「その羨むべき同窓生が不慮の事故、病気で失墜した」と想像してもらいました。
この場合、同窓生が不慮の事故や病気で失墜したのを聞き、彼の身心を案じて「心が痛む」のであれば脳扁桃体の活動が上がり、ストレスホルモン(コルチゾール)が増加 → 前帯状条皮質(ACC)が活発化 → 「心痛」の反応が脳に見られる筈ですが、ここで反応したのが「側坐核」と言って、報酬回路の「快感」を産み出す脳部位でした。
この実験から言えることは、人の不幸に「痛み」、「共感」するのではなく、それが「快感」となる真逆の脳、心理作用が起きたわけで「ヒトの不幸は蜜の味」なのです。
社会通念ではヒトの不幸を喜ぶのは非人間的で社会悪でもありますが、根源的な感情として脳に備わっているものなので、生物学的観点から人間とは元来、性悪な生き物なのかもしれません!
3.「人類の進化」の方向は?
① 「他人の不幸は蜜の味」、これが現人類の意識レベル!?
「他人の不幸は蜜の味」、これが現人類の意識レベルであるならば、この先、万物の霊長である「ヒト」として、脳のコウプト(共感・調和)を基軸にさらに進化、発展させて行くためには、意識もそれに見合った進化を遂げて行くことが必至です!
なぜなら、気づかないうちに自分の持っている偏見や先入観が判断や行動に悪影響を与え、「エゴに基づく脳のコウプト」=「効率化」への転用が発達してしまい、「無意識のバイアス」が強化される可能性があるからです。
② なぜ「他人の不幸が快感になる」現象が起きるのか
これは心理学でシャーデンフロイデ(Schadenfreude)と呼ばれます。
脳のメカニズム的には次の流れです。
♥ 「通常の共感」
相手の痛み → ミラーニューロンや島皮質(insula)が活動 → 共感的痛み
♠ 「特定条件下での逆作用(シャーデンフロイデ)」
相手が「競争相手」「自分より上位」「ねたましい存在」など → 相手の失敗が自己の相対的地位を上げると脳が解釈→ 報酬系(腹側線条体、側坐核)がドーパミン分泌 → 快感として認識
つまり、脳が「相手の不幸=自分の利益」と誤変換する自己防衛的バイアスがかかるわけです。
これは進化心理学的には、集団内での地位争いや、資源獲得競争が有利に働いた可能性のためと考えられます。
③「脳の発達」が先か、「意識の進化」が先か
これは「鶏と卵」論争ですが、神経科学ではこう整理できます。
💠短期スパン(個人発達) → 意識や思考の習慣が脳の回路を変える(神経可塑性)
例:マインドフルネス瞑想 → 前頭前野の厚みや扁桃体の活動抑制が変化
♣ 長期スパン(進化スケール) → 脳の構造変化が意識の可能性を広げる
例:言語野の発達 → 抽象思考や自己省察の意識レベル向上
結論として、短期では意識が脳を変え、長期では脳の変化が意識を拡張するという双方向関係です。
*但し量子力学的な立場では、意識や思考の習慣が脳の回路を変える(神経可塑性)方向性です。観測(意識)したものが物質化する(脳をつくる)からです。
④ 今後の「コウプト化(神経回路の再利用)」の方向性は?
🐵 報酬優先型(利己的)への方向性が強化されて行くと=「脳の退化」
- 快楽や自己利益を最優先
- ドーパミン報酬系が中心となり、短期的な欲求充足が強化される
- 社会的・生態系的な循環を軽視しやすく、持続性が低い
このまま脳の「報酬優先コウプト化」の方向性が発達してしまうと、
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他者の痛みに鈍感
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自分に有利な時だけ快感を覚える
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エゴイズム優位の方向に行くリスクがあります。
💏 共感優先型(利他的)への方向性が強化されて行くと=「脳の進化」
- 他者や生命全体の幸福を優先
- ミラーニューロンやオキシトシン系が活発化し、長期的で安定した関係性を築く
- 宇宙の循環・調和の法則と整合性が高い
意識的な訓練(瞑想・良心に沿って生きることの実践・身体性を伴う共感体験)により、
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島皮質や前帯状皮質など「共感回路」を強化
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報酬系と共感系が協調する回路に再配線
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「他者の喜びも自分の喜び」と感じる方向へ進化できます。
⑤ 正しい「コウプト化」への「意識の方向性」とは?
「コウプトの発達を利己に向ける」=「報酬優先のコウプト化」の発達、「コウプトの発達を利他に向ける」=「共感へのコウプト化」の発達、どちらを選ぶ(意識を向ける)かは人間の「自由意志」の問題ですが、何れにせよ量子意識の観点からみれば、意識の向けかた次第で脳が「退化」に向かうのか、「進化」に向かうのか、二者択一と思われます。なぜなら意識のウエイトが大きい方向へと、観測(意識)したものが物質化する(脳をつくる)からです。
⑥ 「コウプト化」と「宇宙の法則」との関係
宇宙の法則からすると意識は「循環」を基軸に「共生」、「調和」、「利他」の方向が進化の方向に合致すると推察できます。
ならば、脳のコウプト化も「報酬優先」の方向ではなく、「共感」の方向に向け進んでいかなければ、宇宙の進化の法則から外れ、何れ人類は崩壊していくと思われます!
- 宇宙はエネルギーと情報(暗在秩序)の循環を基軸に進化している
- 「奪い合い」ではなく「与え合い」の方向が、生命システムの長期存続に適合する
- 利己偏重は閉鎖系化し、やがて破綻(社会不安・環境崩壊・精神不安定・消滅)へ向かう
- 利他・共感は開放系を維持し、進化の方向(より高い調和・循環)と一致する
⑦ 人間の「自由意志」の役割
人類の大きな意識の流れは、人類の集合無意識の方向性に依存していると考えることができます。集合無意識は、文化や歴史、社会的な経験を通じて形成され、個々の意識や行動に影響を与えます。この相互作用は、個人と集団、そして人類全体の意識の進化において重要な役割を果たしています。
- 脳は可塑性を持ち、どちらの方向にも学習強化できる(脳が進化するコウプト化 or 退化するコウプト化)
- 選択は個々人の意識の向け方に依存する(脳が進化するコウプト化 or 退化するコウプト化の意識の選択)
- 集団の選択(It from Bit )が文明の進路や人類存亡を決定づける(情報の選択=It from Bit !⇒集合無意識を形成 )
- よって「共感へのコウプト化」の選択は単なる倫理観ではなく、種としての生存戦略=生存への道となる
4. まとめ
- 宇宙進化の法則から外れた脳のコウプト化(利己報酬優先)の強化は、文明、人類の長期的存続を危うくする。
- 『共感・調和・循環』を基軸にしたコウプト化は、人類が崩壊せず進化し続けるための道。