健康と施術の情報
真実を観る「眼力」1 (マクロ編)
目(眼)は、光を受容する感覚受容器で光の情報は眼で受容され中枢神経系の働きで視覚が生じます。
1.ヒトの眼は網膜に映った像を電気信号に変換して視覚情報を脳に送ります。視覚ははじめ、網膜の上で対象物を光点の集合として写し取り、その光信号は網膜で電気信号に変換されて脳の後頭葉(視覚野)に運ばれて第1次の情報処理を受けます。
2.網膜から1次視覚野(大脳皮質視覚野)までの情報は、単に視像の輪郭(エッジ)を映しているに過ぎず3次元空間を2次元の平面的情報に置き換えて見ています。
3.その情報がその後も脳の各部位をめぐりながら2次、3次と情報処理されて脳で対象物を認知していきます。これらの視覚情報は30ほどあるとされる視覚野に中継されながら情報処理されて視覚認識されます。最初の視覚情報の情報処理(線、エッジ、輪郭、コントラスト、色 等)は自動的に働きます。
4.更に視覚連合野という脳部位で3次元的空間に変換するための形態分析をおこないます。
5.高次連合野では入ってきた視覚情報を今までの自分の経験、知識、概念等に照らし合わせて視覚情報の解釈をします。この目から送られてきた基本情報が意味あるパターンに結び付けられ対象を解釈し視覚認知されるには、自身の脳にある既存の常識・先入観・知識・概念・経験等に照らし合わせることで対象を意味あるものとして視覚認識する仕組みとなっています。
しかし、入ってきた視覚情報で今までに自分の経験、知識、概念等の無いものに関しては情報の解釈が出来ないので推察して解釈し視覚化する必要があり、このような時にヒトが見るという行為は脳が作ったイメージを見ている、こころの反映を視覚化している、ということになります。
極端な話、文明に接した事の無い未開人が見たこともない飛んでる飛行機を見た時に飛行機と言う認識やそれに関する知識も無いので自分のいままでに体験した情報に転化して視覚化し、あれは鳥だとか、または何にも見えない等!?
このように視覚からの感覚認識さえも「常識・先入観・知識・概念」というフィルターを通すことでありのままの真実を正確に捉える事が出来なくなり脳で誤認識された結果、自身にとって都合の良い合理的な解釈をしてしまいます。ヒトは、他の生物と違い大脳新皮質という思考・演算機能を持つ強力な武器を身に付けたがゆえにその機能(思考回路)が反って仇となり、その産物である常識・概念・観念等が身体感覚からの入力にフィルターをかけて感覚能力を不純なものとしてしまいました。
正邪善悪の入り交じった現象社会において真実を見通す目は、自身の脳にある常識・先入観・知識・概念というフィルターを通さず、ありのままの現象を唯、観察・客観しようとする意識の持ち方と実践、それに基づく分析と行動により真の眼力が磨かれます。
では錯誤する感性(感覚)を、真実を感じとる確かな感性へ磨き育てることはできるのでしょうか?
生物学的に動物とは「動く生物」との如く、物質環境のなかで身体運動を行ってきた生命体です。
これを裏付けるようにヒトの脳は進化的に古い旧脳(脳幹・小脳・大脳基底核)の上に大脳新皮質がのっている構造となっています。
旧脳(脳幹・小脳・大脳基底核)は身体活動、身体運動(出力)に深い関係をもつ脳部位です。
ヒトの脳の構造からも分かるよう、旧脳から派生し後付けで大脳新皮質を発達させて来たことは生物は本来、身体運動(出力)を重点に作られ、それから身体感覚(入力)と身体運動(出力)のバランスを発展させて来たことをうかかがわせます。
米デューク大学のクルパ博士の実験では、ネズミがヒゲを積極的(能動的)に動かし(身体運動=出力)モノに触れた(感覚神経=入力)時と、ヒゲを(受動的)に(身体運動=出力)なしでモノに触れさせた(感覚神経=入力)時の感覚神経の活性度は、積極的に身体運動からモノに触れた時の方が10倍も感覚神経が活性化したそうです。
この事からも感性(感覚神経)は、身体運動や行動という(出力)から発信した方が活性化しやすい特性があるので、この脳の特性を使い、意志から行動を通し体感しながら感性を磨いて行くことは脳生理学的にも順当な方法だと思われます。
感覚・感性の活性化の方向 |
脳・前頭前皮質(意志)→身体運動、行動(出力)→身体感覚、感性(入力)の活性化 |