Health and self-therapy information
asa health information 2026年7月号 アルコールは本当に「百薬の長」なのでしょうか? ― 最新医学が明らかにしたアルコールとがんの関係 ―
アルコールは本当に「百薬の長」なのでしょうか?― 最新医学が明らかにしたアルコールとがんの関係 ―
長い間、
「少量のお酒は健康によい」
「赤ワインは心臓病を予防する」
「適量なら毎日飲んでも問題ない」
という話を耳にしてきた方も多いでしょう。
しかし近年、この考え方は世界中の大規模研究によって大きく見直されています。
現在では、世界保健機関(WHO)や国際がん研究機関(IARC)、そして The Lancet 系列の国際研究により、
アルコールはヒトに対する確実な発がん物質(Group 1)であることが明確に示されています。さらに、「がん予防の観点では安全な飲酒量は確認されていない」とする見解が国際的な共通認識となっています。
アルコールは7種類以上のがんの原因になる
現在、アルコールとの因果関係が確認されている主ながんは、
-
口腔がん
-
咽頭がん
-
喉頭がん
-
食道がん
-
肝臓がん
-
大腸・直腸がん
-
女性の乳がん
です。
お酒の種類は関係ありません。
ビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキーなど、どのお酒でも原因となるのは共通して含まれるアルコール(エタノール)です。
なぜアルコールは発がん物質なのか
飲酒すると体内でアルコールは分解され、
アセトアルデヒド
という物質が作られます。
このアセトアルデヒドはDNAを傷つける強い発がん物質です。
さらに、
-
活性酸素を増やす
-
慢性的な炎症を起こす
-
女性ホルモンのバランスを変える
-
たばこの発がん物質を体内へ取り込みやすくする
など、複数の仕組みでがん発症のリスクを高めることが分かっています。
「少量なら健康に良い」は本当?
かつては、
「少量の飲酒は心臓病を減らす」
という研究が多く紹介されました。
しかし近年、それらの研究には、
-
元々健康な人が適量飲酒をしていた
-
病気で禁酒した人が「飲まない人」に含まれていた
-
生活習慣や経済状況などの影響を十分に除外できていなかった
などの問題があったことが分かってきました。
最新の解析では、仮に心血管疾患へのわずかな利益がある場合でも、それをがんを含む健康へのリスクが上回る可能性が示されています。そのためWHOは「健康のために飲酒を始める理由はない」としています。
あやかさん、登山中の飲酒を戒める
世界ではどのくらいの人がアルコールでがんになるのか
2020年の国際研究では、
世界で約74万1千人が、飲酒が原因と考えられるがんを新たに発症した
と推計されています。
これは、
世界の新規がん患者のおよそ4%
に相当します。
しかも、この中には「大量飲酒者」だけではなく、1日2杯以下程度の飲酒に関連すると考えられる症例も含まれています。
日本人は欧米人より注意が必要
日本人を含む東アジア人には、
アルコールを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い人が非常に多くいます。
この体質では、
発がん物質であるアセトアルデヒドが体内に長く残るため、
欧米人よりも、
特に
-
食道がん
-
口腔がん
-
咽頭がん
などのリスクが高くなることが知られています。
お酒を飲むと、
-
顔が赤くなる
-
動悸がする
-
気分が悪くなる
という方は、この体質の可能性が高く、より注意が必要です。
飲まない人が飲み始める必要はありません
もちろん、お酒は文化や人との交流の一部でもあります。
すべての人が完全に禁酒しなければならないという意味ではありません。
しかし、医学的には、
飲酒量が少ないほど健康リスク、とくにがんのリスクは低くなる
ことが分かっています。
そのため、
-
飲まない人は、そのまま飲まない。
-
飲む人は、飲酒量や頻度をできる範囲で減らす。
-
休肝日を設ける。
-
喫煙との併用は避ける。
といった選択が、将来の健康につながります。
おわりに
医学は日々進歩しています。
以前は「少量のお酒は健康によい」と考えられていた時代もありました。
しかし最新の科学は、
アルコールは確立した発がん物質であり、飲酒量が増えるほどがんリスクも高くなることを示しています。
特に日本人は体質的にアルコールの影響を受けやすい人が少なくありません。
健康寿命を延ばすためには、「どれだけ飲めるか」ではなく、「どれだけ減らせるか」という視点が、これからの新しい健康習慣となるでしょう。
正しい知識を持ち、自分自身のライフスタイルに合った賢い選択をすることが、未来の健康への第一歩です。

