Health and self-therapy information
asa Health Information 2026.1月号 ③ 姿勢戦略による『間』の体現
立っているときに突然後方から押された場合、立っている姿勢を保持するために様々な調整機能が働き、立位を保持しようとする防御反応が働きます。
立っているときの姿勢を保つしくみで大事な考え方は、「重心(体の重さの中心)を足で支える範囲(支持基底)」の上に保つことです。
バランスを崩しそうになると、体は重心をこの範囲の上に戻すために、
足関節(くるぶし)戦略、
股関節(腰)戦略、
踏み出し(ステップ)戦略、
という3つの方法(戦略)を使い姿勢を維持しようとします。
1. 足関節(くるぶし)戦略
• どうするか:
足首を使って体全体を前後にゆっくり傾けます。体は一枚の板のようにまっすぐ保ったまま、くるぶしを支点にして揺れるイメージです。
• 簡単な例え:
「まっすぐな板が足首で前後に揺れる」感じ。
• いつ使うか:
ゆっくりで小さな揺れや、足元がしっかりしているとき(広めに立っている、床が固いなど)。例えば、バスが少し揺れたときなど。
• 見た目の特徴:
足首のところで前後に揺れが出て、膝や腰はあまり曲がらない。
2. 股関節(こし)戦略
• どうするか:
腰(股関節)を曲げて上半身を前後に動かし、重心を移動させます。上と下の体を別々に動かす感じで、上体がぐっと動きます。
• 簡単な例え:
「胴体を折り曲げてバランスをとる」感じ。
• いつ使うか:
揺れが速かったり比較的大きいとき、足関節だけでは間に合わないとき。柔らかい地面や狭い立ち方のときにも使われやすいです。
• 見た目の特徴:
腰から大きく折れるように前かがみや後ろ反りになり、上体の動きが大きい。
3. 踏み出し(ステップ)戦略
• どうするか:
バランスが大きく崩れて支持基底(両足で支えている範囲)だけでは戻せないと判断したら、一歩踏み出して足の位置を変え、支持基底を広げます。新しい足の位置で重心を安全に支えます。
• 簡単な例え:
「転びそうになったときに咄嗟に一歩出す」感じ。
• いつ使うか:
倒れそうになるほど大きな乱れが起きたとき。例えば、誰かに強く押されたときや足元が急に滑ったとき。
• 見た目の特徴:
すばやく前や後ろ、横に一歩(または何歩か)踏み出す。
4.戦略の使い方まとめ(覚え方)
小さくてゆっくり → 足首で調整。[足関節(くるぶし)戦略]
速くてやや大きい → 腰で調整。[股関節(こし)戦略]
とても大きくて収まらない → 足を動かして踏み出す。[踏み出し(ステップ)戦略]
「立位姿勢を維持」するためのそれぞれの戦略は、重心が支持基底面から外れる、または、外れかけたら、「重心を戻す」ための戦略であり、
この戦略は、『反射』で反応する、または、『間』を保つために、間から外れる、または、外れかけたら、「静止した中心に戻す」事との間に、密接な関係性があります。
✅「足関節戦略」・「股関節戦略」・「踏み出し戦略」は、単なる姿勢制御の分類ではない
👉 反応で動くか、間を保って動くか
👉 意識の軸がどこにあるか
を、そのまま身体で表しています。
1. 3つの姿勢戦略を「意識の状態」と対応させる
① 足関節戦略=(小さな揺れへの反応)
| 身体 | 意識 |
| 足首で揺れを止める | 反射的 |
| 上体は固まりやすい | 判断が早い、浅い |
|
👉足関節戦略=「反応で動く」状態 日常では驚いてビクッとする、すぐ言い返す、焦るときの身体です。 |
|
② 股関節戦略=(大きな揺れへの対応)
| 身体 | 意識 |
| 腰が主導 | 少し余裕がある |
| 上下が分離し始める | 目的意識が生まれる |
|
👉股関節戦略=「制御しようとする意識」 ただし「やろう」とする 間は生まれかけていますが、まだ操作です。 |
|
③ 踏み出し戦略=(転倒を避けるための移動)
| 身体 | 意識 |
| 支持基底面を更新 | 状況全体を感じ取る |
| 動いて安定を取り直す | 判断が遅く、深い 先を読んでいる |
|
👉踏み出し戦略=「間を含んだ動き」 ここで初めて反応ではなく、選択になります。 |
|
2. 「間」とは、どこで生まれるのか?
💡重要
間は、筋肉や関節にあるのではありません。
👉 「戦略を切り替えられる余白」
これが間です。
- 足関節だけで止めようとしない
- 股関節だけで耐えようとしない
- 必要なら踏み出せる
この選択可能性がある状態。
3.意識の軸と姿勢戦略の関係
🟥 意識の軸が「上」にあるとき
✔ 足関節戦略に偏る
✔ 反射的
✔ すぐ止めようとする
🟩 意識の軸が「丹田」にあるとき
✔ 股関節戦略が自然
✔ 上下が分離
✔ 動きに余裕が出る
🟦 意識の軸が「全身・空間」にあるとき
✔ 踏み出し戦略が自由に使える
✔ 環境と調和
✔ 間が最大化する
4. なぜ「踏み出し戦略」が最も『間』に近いのか?
踏み出し戦略は、
- 揺れを止めていない
- 受け流している
- 場を更新している
これはまさに
起きた出来事を否定せず、
場を変えて応答する=柔軟に対応
という意識の在り方と同じです。
5. 日常での体感的まとめ
立っているときに、
- 揺れた瞬間、止めようとしたら → 反応
- 揺れを感じて腰が動いたら → 制御
- 揺れを感じて一歩出られたら → 間
⬇
この対応関係はそのまま
例えば(間から滲み出る行為としての)
✔ 会話=相手の最後の言葉が出るまで待ち、最初の言葉を話す
✔ 判断=反射的に判断しないで、間(余白)を入れると深く、先が読める
✔ 対人関係=相手に反応せず、相手を尊重したまま、自分と相手の境界が静かに保たれているので(反応の間の余白)、近くに居ても絡まれない、関わっても乱れない、間(余白)のある関係が保たれる
などにも現れます。
6.踏み出せる身体に戻す3分ワーク
✅ 目的
揺れても止めず、自然に一歩が出る状態を思い出す
① 1分|足裏を「広げて置く」
<やり方>
- 靴を脱ぐ(可能なら)
- 足を腰幅
- 踵・母趾球・小趾球を床に置くだけ
- 体重を乗せようとしない
- 意識
✔ 踏まない
✔ 押さない
ただ「触れている」
- 変化サイン
✔ 足裏が温かくなる
✔ 足指が自然に広がる
👉 支持基底面が“感じられる”
② 1分|前に倒れ続ける
<やり方>
- 膝を軽く緩める
- 背中を丸めず、股関節から前傾
- 「倒れるのを止めない」
- 倒れそうになったら
👉 足が勝手に半歩出るのを許す
※ 出なければ出なくてOK、出そうになる感覚を待つ
- 意識
✔ 立とうとしない
✔ 支えない
✔ 倒れ続ける
- 変化サイン
✔ 腰が軽い
✔ 太ももが頑張っていない
👉 踏み出し戦略の入口
③ 1分|呼吸で一歩を招く
<やり方>
- 立ったまま
- 鼻から軽く吸う
- 長く吐く(6〜8秒)
吐き終わる直前に
👉 足が前に出るのを許す
- 意識
✔ 歩こうとしない
✔ 呼吸が動きを連れてくる
- 変化サイン
✔ 動きが遅くなる
✔ 安心感が出る
👉 反応ではなく選択になる
④ 3分後に確認すること
- 揺れても止めなくなっている
- 一歩が軽い
- 頭より先に足が動く
これが出ていれば成功です。
よくある失敗(大事)
❌「正しくやろう」とする
❌ 足を出そうと頑張る
❌ バランスを取ろうとする
👉 全部、止める方向です。
✅ ワークの本質(超重要)
この3分で起きているのは、
- 足関節戦略を使わない練習
- 股関節を通過点に戻す
- 踏み出し戦略を許可する
つまり
身体に
- 「止めなくていい」
- 「動いても大丈夫」
と再教育しているだけ。
7.まとめ
踏み出せる身体とは、
勇気がある身体ではなく、
止める必要のない身体。








