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2025-04-30 15:53:00

真実を観る「眼力」40 ミラーニューロンで理想を実現する

<ヒトからの影響>

「誰の影響を受けるかが人生を左右する」

私たちの価値観や行動は「誰と一緒にいるか」 によって大きく変わります。

心理学には、次のような法則があります。

ミラーニューロンの法則:「人は周囲の行動を無意識に真似する」
共感の法則:「第三者の感情を観察すると、自分も同じ感情を感じる」
学習の法則:「観察するだけで学習することができる」
人間関係の法則:「周囲の態度や雰囲気に影響を受けやすい」

成功しているヒト、理想的なヒトと一緒にいると、その価値観や行動が自然と身につき、自分の考え方も変わります。

 

<ミラーニューロンとはどのような働きのある神経細胞か>

(ミラーニューロン)

  • 相手の動きや表情を見るだけで
    自分の脳も“まねるように”反応する神経細胞。

  • 他人の気持ちや行動を「感じる力」の土台となります。

つまり他者の言動を見聞きした時、その他者の言動が自分と共感したり共鳴するものであった場合、ミラーニューロン(鏡のような神経細胞体)に活動電位が発生し、マネ(シミュレーション)する事でその時に相手に起こっている状態を鏡に映すように、同じ反応を自己に起こさせる細胞体なのです。

通常、コミュニケーションは言葉を使った伝達を思い浮かべますが、ヒトのコミュニケーションは、顔の表情やしぐさといった言葉で無い手段を用いる非言語コミュニケーションに負うところが大きく、非言語コミュニケーションにおいては、ミラーニューロンと呼ばれる神経細胞が重要な役割を担っています。

ミラーニューロンは、自分が目にした相手の表情やしぐさを、自分自身の表情やしぐさに重ね合わせる機能を持っていて、まるで他者の行動を自分の脳内で「鏡」のように反映するような働きをすることから、ミラーニューロンという名が付きました。

例えば、

笑顔を向けられたら、自分も笑顔になってしまったとか、

あくびがうつった、

目の前の相手の表情や動作に「つい、つられてしまった」ということも、ミラーニューロンによる脳の機能によるものです。

映画を見て思わず感動の涙を流してしまう、

他人の行動を見て感動する、

など、私たちが他人を理解したり、共感できるのはこの細胞(ミラーニューロン)があるからだと言われいます。

 

3細胞膜 図2.jpg

 

<ミラーニューロンの役割>

ミラーニューロンは、以下のような重要な役割を担っていると考えられています。

  • 他者の行動の理解: 他者の行動を自分の運動経験と照らし合わせることで、その行動の意味や目的を理解する助けとなります。
  • 模倣学習: 他者の行動を見て、それを真似る(模倣する)ことを容易にし、学習を促進します。
  • 共感: 他者の感情表現(表情、身振りなど)を見た時に、自分自身の感情に関連する脳領域も活性化させることで、他者の感情を理解し、共感する基盤となると考えられています。
  • 意図の理解: 行動の細部だけでなく、その背後にある意図を推測するのに役立つと考えられています。
  • 言語の理解と発達: 特にヒトにおいては、言語の理解や発達にも関与しているという説があります。

 

<ミラーニューロンの起源>

ミラーニューロンは、1990年代初頭にイタリアのジャコモ・リゾラッティらの研究チームによって、サルを使った実験中に偶然発見されました。彼らは、サルの運動前野(特にF5領域)の神経細胞を調べている際に、サル自身が特定の動作(例:手を伸ばして物を掴む)をした時だけでなく、別のサルや研究者が同じ動作をするのを見た時にも、その神経細胞が活動することを発見しました。

ミラーニューロンの共感の機能は、元々は模倣の機能が転用されたもので、具体的には、飼育員が猿の前でバナナを食べたとき、サルはバナナを食べてないのに飼育員がとった行動を見て、バナナを食べたときに反応する脳部位が反応していました。

この事から、ミラーニューロンは他者の行動を見て、自分が同じことをしているように感じたり、子供が親の行動を見て模倣したり、言語習得をする際にも働いているのではないかと推測され、その動作の意味を理解してまねることで、自分の知識や経験の幅を広げていくことにも役立つとみられています。

特に、ヒトでは生後間もない時から、両親の動作などをまねて、ミラーニューロンが関わる学習をし、ミラーニューロンによる働きが発達しているおかげで、相手の気持ちを理解したり、共感できる複雑で高度なコミュニケーションを可能にしています。

 

<ミラーニューロンの脳>

ミラーニューロンが作用するために機能する脳部位とその作用機序は、複数の段階を経て複雑に連携しています。

(ミラーニューロンの主要な脳部位)

ミラーニューロンの研究は主にサルで行われてきましたが、ヒトにおいても同様の機能を持つと考えられる領域が同定されています。主要な部位は以下の通りです。

  1. 下前頭回 (Inferior Frontal Gyrus: IFG):特に弁蓋部 (Pars Opercularis) と 三角部 (Pars Triangularis) が重要です。これは、サルにおけるミラーニューロンが最初に発見されたF5領域に相当すると考えられています。運動の計画、実行、そして他者の運動の観察に関わります。ヒトの言語機能に関連するブローカ野の一部も含まれます。
  2. 下頭頂小葉 (Inferior Parietal Lobule: IPL): 特に前頭頂皮質吻側部 (Anterior Intraparietal Sulcus: aIPS) が重要です。他者の意図的な行動の理解や、自己と他者の行動の区別に関わると考えられています。
  3. 上側頭溝 (Superior Temporal Sulcus: STS): 生物学的動作(手足の動き、顔の表情、視線の動きなど)の視覚的な知覚と分析に重要な役割を果たします。IPLへの入力元となります。
  4. 運動前野 (Premotor Cortex: PMC) および 補足運動野 (Supplementary Motor Area: SMA): 運動の準備やシーケンスの制御に関わる領域ですが、他者の行動観察時にも活動が見られます。
  5. 一次体性感覚野 (Primary Somatosensory Cortex: S1): 他者の触覚や感情的な表現の観察時に活動が見られることがあり、共感に関与する可能性が示唆されています。

15脳構造 大脳皮質 2.jpg

 

<ミラーニューロンの活用法>

「鏡の法則」の心理学的な側面では、自分の内面(こころ)が発した投影が対人や環境に反映されて、反映された自分の対人関係や環境を観察する事で、自分自身の心の在り方や状態を認識する事ができると言われています。

この様に「鏡の法則」を、自分を取り巻く人間関係も環境も決して偶然の産物でなく、自分の”こころの反映(内面の反映)”として捉える事でも、ポジティブで自立した人生を構築する上で大切な考え方となります。

さらに、ミラーニューロンの働きを意識的に活用することで、身心の発達や成長、他者とのコミュニケーションの改善、学習への活用などに役立たせることができます。

(自己成長への活用)

ミラーニューロンは、他者の行動を観察することで活性化します。理想の人物像を意識的に観察し、可能であれば実際に体験することで、その特性を自己に取り込みやすくなります。観察する際には、視覚だけでなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚など、五感を意識的に働かせることが重要です。例えば、優しい人の声のトーン、落ち着いた人の呼吸、情熱的な人のジェスチャーなどを感じ取ります。

  • 理想の人物像の模倣: ミラーニューロンは他者の行動や感情を内的に模倣する働きを持つため、理想とする人物像の行動や思考パターンを観察し、意識的に自分の行動に取り入れることで、理想の自己像に近づくことができます。例えばすぐにネガティブにとらえ悲観的な人ならば、ポジティブで前向きなヒトの言動をマネするとか、自分がこうなりたいと思う様なヒトとの交流や、新たなコミュニティを探したり、自主的に自分の理想とするようなヒト、環境、習慣を変えていくなどです。高い人格者をまねる(模倣)は、自らの内面を高める最良で最短な方法です。
  • 感情のコントロール: ミラーニューロンは、観察した行動だけでなく、その背後にある感情や意図も内的に模倣すると考えられています。落ち着いた人の振る舞いを観察し、観察した人物がどのような感情を抱いているのか、その感情の源は何なのかを想像し、共感しようと努めます。それを模倣することで、自身の感情を安定させる助けになります。

(コミュニケーションへの活用)

  • 共感力の向上: 相手の表情や身振りを注意深く観察し、その感情を想像することで、共感力を高めます。

   観察→想像→確認のサイクルで、ミラーニューロンが活性化します。

   「共感脳ネットワーク」 

  • 非言語コミュニケーションの学習: 効果的な非言語コミュニケーション(ジェスチャー、アイコンタクトなど)を観察し、自分のコミュニケーションに取り入れることで、よりスムーズな意思疎通を図ることができます。
  • プレゼンテーション能力の向上: 魅力的なプレゼンターの話し方や立ち振る舞いを観察し、自分のプレゼンテーションに取り入れることで、聴衆を引きつける力を高めることができます。

(学習への活用)

  • 技能習得: スポーツや楽器演奏などの技能を習得する際に、上手な人の動きを注意深く観察し、自分の動きと比較しながら練習することで、より効率的な学習が期待できます。
  • 言語学習: ネイティブスピーカーの発音や会話の様子を観察・模倣することで、自然な言語習得を促すことができます。

 

<まとめ>

ミラーニューロンは他人の行動や感情を見ただけで“自分の脳”が同じ反応をする神経細胞群で、私たちの感情の半分以上は「他人の感情を模倣したもの」なのかもしれません。

つまり、誰かの感情を演じるミラーニューロンの錯覚を通し、私たちの器(脳と身体)は、“虚構に本気で反応するように設計されている”のです。

意識的にミラーニューロンを活用することは、自己成長、理想的な自分に近づく、他者との繋がりや共感、コミュニケーション能力の向上、学習などの強力な助けとなります。