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歩行の技術を高める インナーマッスルと重心移動の使い方
体幹筋を意識し登山すると胴体が安定して四肢(腕・脚)の動きが円滑となり、エネルギー効率の高い歩行になるのでスムーズでスピーディーな登山ができ筋疲労も軽減します。
体幹とは「体の幹」つまり胴体のことで、胴体の筋肉のことを体幹筋群(コアマッスル)といいます。
体幹筋のみならず関節の深部に位置する筋(インナーマッスル)は関節に適度な緊張を与え安定性を高める働きをしています。
全体としてインナーマッスル(身体の深層部に存在する筋肉)の働きは、体が動作を起こす時などに直接働く筋肉ではなく、正しい姿勢を長時間維持したり、骨や関節の動きをサポートする働きがある筋肉です。
1997年.オーストラリアのホッジス(Hodges)らのグループによる研究によると、「腕や脚を動かす運動を指示したとき、腕や脚よりも先に腹筋群や背筋群といった体幹の筋肉群に筋活動が起こる」ことがわかりました。
例えば、腕を挙げる時に腹横筋(体幹インナーマッスル)は主動筋(三角筋.腕を挙げる筋肉)に先行して活動し、体幹筋の中で最も早く活動を開始します。
同様の結果が下肢(脚)の運動でも確認されており四肢運動時に腹横筋(体幹インナーマッスル)は主動筋よりも早く活動しています。
このように腕や脚を動かそうとする時、四肢(腕・脚)の動きに先んじて体をしっかりと固定し(体幹を安定させ)、土台を固める働きが体幹筋群に自然に起こってからのち、四肢の筋肉に動きが伝えられています。
体幹筋を意識しながら登山することは四肢(腕・脚)へのスムーズで効率的な力の伝達と円滑な運動を制御して、運動効率や運動能力を高めます。
ウォーキングのとき、足に作用する力は、筋力、重力、運動による慣性力のほか、ニュートンの第3法則(作用・反作用の法則)にしたがい、立位で足底が地面についているとき、足底が地面を圧する力と同等の力が地面から反力として作用します。これを床反力といいます。
ニュートンの法則では、物体の重心が移動するには外力が作用しなければならないとあります。
外力とは物体の外から作用する力で人間でいうと皮膚の外から加わる力の事で、筋力は皮膚の内側で力を発揮するので内力といいます。なので筋力(内力)だけではヒトは重心移動させて移動することは出来ません。
地球上でヒトに作用する外力は、重力と床反力の2つです。
重力は地球上では不変ですが、床反力は身体が床面を押す力の反発力なので、ヒトが重心移動しながら動けるのはこの床反力という地面からの反発力を使い(制御し)ながら筋肉を作用させはじめて、ウォーキングやランニングなど重心移動する運動ができるのです。
体幹筋から四肢への運動を効果的に作用させ、接地時の床反力からのスムーズな重心移動は、歩行効率と推進力を高めて歩行を安定させ、縦走登山など長距離歩行になればなるほどこれを踏まえた歩行技術は、エネルギー効率とパフォーマンス向上を高める上で大切になります。
私が山歩きで意識するポイントは、仙骨を少し前傾気味(前方への重心移動がスムーズになる)にしインナー腹筋を使い、脚の動きはインナーマッスルに追従させ、足趾(拇指)で地面を蹴る(押す力)=(床反力)ことを意識し、スムーズな重心移動による効率的、効果的な歩行を心がけています。