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黄砂、飛来 人体への影響と対策
黄砂とは
黄砂(こうさ)は、中国北西部やモンゴル、東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯から強風によって吹き上げられた多量の砂塵(砂やちり)が、上空の風によって運ばれ、浮遊しつつ降下する現象を指します。
黄砂は、主に春先(3月から5月頃)に発生することが多く、偏西風に乗って日本列島に飛来します。黄砂が飛来すると、空が霞んだり、視程が悪くなったり、洗濯物や車などが汚れたりするなどの影響があります。
黄砂の発生メカニズム
黄砂が発生するメカニズムは以下の通りです。
- 東アジアの砂漠域(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など)や黄土地帯で、強風によって砂塵が巻き上げられます。
- 巻き上げられた砂塵は、上空の風に乗って東アジア各地に運ばれます。
- 日本列島に到達した砂塵は、上空を漂いながら徐々に降下します。
黄砂に含まれる有害物質
黄砂に付着する有害物質は、主に以下の3種類が挙げられます。
1. 大気汚染物質
黄砂が発生する地域は、中国など工業地帯や都市部が多く、工場や自動車から排出される煤煙や硫黄酸化物、窒素酸化物などの大気汚染物質が付着することがあります。これらの物質は、呼吸器疾患や心疾患などの原因となる可能性があります。
2. 重金属
黄砂には、鉛、カドミウム、ヒ素などの重金属が付着していることがあります。これらの重金属は、長期的に摂取すると、神経障害や腎臓障害などの健康被害を引き起こす可能性があります。
3. 微生物
黄砂には、細菌やカビなどの微生物が付着していることがあります。これらの微生物は、アレルギー症状を引き起こしたり、感染症の原因となる可能性があります。
近年では、黄砂にマイクロプラスチックが付着していることも確認されています。マイクロプラスチックは、人体への影響はまだ十分に解明されていませんが、将来的に健康被害を引き起こす可能性が懸念されています。
微小粒子状物質(PM2.5)とは
PMの大きさ(人髪や海岸細砂)との比較(概念図)(出典:USEPA資料)
大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことで、PM2.5は非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系への影響に加え、循環器系への影響が心配されています。
PM2.5と黄砂は、それぞれ異なる物質ですが、以下のような関係があります。
1. 黄砂の一部がPM2.5に含まれる
黄砂の粒子は、直径0.5~5μm程度ですが、PM2.5はその名の通り、2.5μm以下の微小粒子を指します。そのため、黄砂の中でも2.5μm以下の細かい粒子は、PM2.5に含まれることになります。
2. 黄砂がPM2.5濃度を上昇させる
黄砂が飛来すると、大気中の粒子状物質濃度が上昇し、PM2.5濃度も高くなります。これは、黄砂自体がPM2.5に含まれるだけでなく、黄砂に付着している大気汚染物質などもPM2.5濃度に影響を与えるためです。
3. 黄砂がPM2.5の健康被害を悪化させる
PM2.5は、呼吸器系や循環器系に悪影響を及ぼすことが知られています。黄砂が飛来すると、PM2.5濃度が上昇し、これらの健康被害がさらに悪化する可能性があります。これは、黄砂に付着している有害物質が、PM2.5よりもさらに人体に悪影響を与えやすいためです。
環境省 PM2.5に関する情報より https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html
黄砂の人体への影響
1. 呼吸器への影響
人の呼吸器と粒子の沈着領域(概念図)(出典:国立環境研究所)
- 気管支ぜんそくやCOPDなどの呼吸器疾患の悪化
- 黄砂に含まれる微小粒子(PM2.5など)が気道に炎症を引き起こし、呼吸器疾患の症状を悪化させる可能性があります。
- 実際に、黄砂飛来時とそれ以外の時期を比較した研究では、黄砂飛来時の方が気管支ぜんそく患者に入院が必要となるケースが多いことが示されています。
- 肺炎
- 黄砂に含まれる細菌やウイルスが気道から侵入し、肺炎を引き起こす可能性があります。
- 特に、小児や高齢者は免疫力が低いため、肺炎にかかりやすいと言われています。
- 咳、痰、喉の痛み
- 黄砂を吸い込むことで、咳、痰、喉の痛みなどの症状が現れることがあります。
- これらの症状は、通常数日で治まりますが、ひどい場合は医療機関を受診する必要があります。
2. アレルギー症状の悪化
- 花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が悪化する
- 黄砂に含まれる微小粒子は、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンと同様に、気道や皮膚を刺激する可能性があります。
- 実際に、黄砂飛来時とそれ以外の時期を比較した研究では、黄砂飛来時の方が花粉症患者のアレルギー症状が悪化する傾向があることが示されています。
3. 目の症状
- 目のかゆみ、充血、結膜炎
- 黄砂に含まれる微小粒子は、目を刺激し、目のかゆみ、充血、結膜炎などの症状を引き起こす可能性があります。
- 症状がひどい場合は、眼科を受診する必要があります。
4. その他
- 心疾患や脳卒中のリスク上昇
- 黄砂に含まれる微小粒子は、血管を収縮させ、血圧を上昇させる可能性があります。
- その結果、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇する可能性があります。
- 実際に、黄砂飛来時とそれ以外の時期を比較した研究では、黄砂飛来時の方が心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いことが示されています。
黄砂への対策
黄砂による健康被害を防ぐために、以下の対策が有効です。
- 外出を控える
- 黄砂が飛来している場合は、できるだけ外出を控えるようにしましょう。
- 外出する必要がある場合は、マスクを着用するなどして、黄砂を吸い込まないようにしましょう。
- 室内を清潔に保つ
- 窓を閉め、エアコンを使用するなどして、室内に黄砂が入らないようにしましょう。
- 掃除機を使って、床や家具に付着した黄砂をこまめに掃除しましょう。最も有効な方法は水拭きです。
- 加湿器を使用する
- 加湿器を使用して、室内の湿度を50~60%に保ちましょう。
- 乾燥した空気は、気道や皮膚を刺激し、黄砂の影響を受けやすくします。
- 水分をこまめに補給する
- 水分をこまめに補給して、喉の乾燥を防ぎましょう。
- 乾燥した喉は、黄砂の影響を受けやすくします。
- 体調に異変を感じたら医療機関を受診する
- 咳、痰、喉の痛み、目のかゆみなどの症状がひどい場合は、医療機関を受診しましょう。
マスク対策
抗原 | 微粒子の大きさ(ミクロン) | 対応マスク 除去率 |
黄砂(PM2.5) | 2.5 ミクロン以下 |
PM2.5マスク (2.5ミクロン以下の微粒子) 90%以上 KF94 マスク(0.4ミクロン以上の微粒子)94%以上 N95 マスク (0.3ミクロン以上の微粒子)95%以上 |
新型コロナウイルス |
0.08~2.2 ミクロン |
KF94 マスク (0.4ミクロン以上の微粒子) 94%以上 N95マスク (0.3ミクロン以上の微粒子)95%以上 |
スパイクタンパク | 0.01 ミクロン以下 | 該当なし |